「親の介護をやめたい」
そう感じる夜は、決してあなただけではありません。
夜中に何度も呼ばれる。良かれと思った行動が、敵対心で返ってくる。
親が「親」じゃなくなっていく切なさを、毎日のように味わっている方は、本当に多いです。
私自身、34年間看護師として働いてきて、今は母の介護を現在進行形で続けている50代です。
看護師として外から見てきた家族介護の世界と、自分が当事者になった世界は、想像を超えて違いました。
この記事では、「やめたい」と感じる気持ちの正体から、今夜できるやり過ごし方、長く介護を続けるための処方箋まで、当事者の本音でお伝えします。
夜中に「もう無理かも」と感じる夜が、実は私もあるんです。
ここでは「頑張れ」じゃなく、「ここまでよく頑張ったね」という気持ちで書いていきますね。
「親の介護やめたい」と感じる自分を、責めなくていい

「親の介護やめたい」と感じる自分を、責めなくていい。
それは冷たさではなく、ここまで一人で抱えて頑張ってきたから湧いてくる気持ちです。
「さっきトイレ行ったじゃない」と何度伝えても通じなくて、もういい加減にしてと思った瞬間、「やめたい」と頭をよぎる。
そんな時、自分は冷たい人間なんじゃないかと感じてしまうかもしれません。
でも、ここまで一人で抱えてきた人が、責められるはずがないんです。
「やめたい」と感じても介護放棄ではない
「やめたい」と感じても、法律違反にはなりません。
扶養義務は「自分の手で24時間365日世話する義務」とは違うからです。
民法には「親子には扶養義務がある」と書かれています民法第877条(e-Gov法令検索)。
ただし、訪問介護・デイサービス・ショートステイといった公的サービスや、施設入所を組み合わせて親の生活が成り立てば、それで義務は果たせています。
頭の中で「やめたい」と感じても、ショートステイや訪問介護を使っても、まったく違反にはなりません。
「やめたい」の本当の正体 ── 心が疲れる3つの感情
やめたいと頭をよぎる時、本当に苦しいのは肉体の疲れだけが原因とは限りません。
会話が噛み合わなくなる戸惑い、何度言っても伝わらないつらさ、自由時間が消えていく焦り。これらが日常で積み重なるからです。
だから、やめたいと感じるのは当たり前。
「やめたい」が湧く瞬間|介護家族のリアル

「親の介護やめたい」と頭をよぎるのは、日常の小さな出来事が積み重なって湧いてくる気持ちです。
介護は肉体の疲れだけでなく、心がすり減る場面がいくつも重なるから。
特に多いのが、次の3つの瞬間です。
「これ私の服よ」と言われる、伝わらない繰り返し
着替えを促しただけなのに「なんで着替えるの」と返される。
良かれと思った行動が、敵対心で返ってくる瞬間です。
何度説明しても、また同じことを言われる。
同じやりとりの繰り返しが、心をすり減らしていきます。
急に表情が変わる親、別人を見る感覚
普通に笑って会話していたのに、次の瞬間、表情が怖くなる。
辻褄の合わないことを言い始める。
「親なのに、別人みたい」
その距離感が一番つらいんです。
自分の時間が、消えていく日々
夜中に何度も呼ばれる。友達と気軽に出かけられない。
自分の時間が、毎日少しずつ減っていきます。
こんな瞬間が、日常の中に何度もあるんです。
だから、やめたいと感じるのは当たり前。
今夜の苦しさをやり過ごす方法は、ちゃんとあります。
今夜できる「やり過ごし方」|小さな気分転換から

今夜の「やめたい」気持ちは、無理に消そうとしなくて大丈夫です。
ほんの5分でも、「介護以外の何か」に意識を向けるだけで、張り詰めていた気持ちが緩んで、心の負担が軽くなるからです。
特に効果があるのが、次の3つです。
介護から5分だけ意識を逸らす
テレビをつける。気になっていた本を1ページだけ読む。スマホで動画を見る。
何でもいいんです。介護から完全に離れた時間を、意識的に5分だけ作ってみてください。
「集中しなくちゃ」と思わなくていい。
ただ、視線と意識を別の場所に向けるだけで、心が一瞬リセットされます。
友達と介護以外の話をする
愚痴を聞いてもらう時間と、介護とは関係ない楽しい話をする時間。どちらも心の回復に必要です。
私自身、友達とご飯に行く時はむしろ介護以外の話をします。映画、旅行、最近見たドラマ。
介護の世界から一時的に出る時間が、何よりの気分転換になります。
夜の切なさは無理に消さない
夜になると、急に「私、何しているんだろう」と切なくなる瞬間があります。
私自身も、夜になってそう感じる時があります。
その切なさは、無理に消さなくていい。
やるせない気持ちが湧いたら、湧くままに受け止める。
介護で潰れないための処方箋

介護を一人で抱え込まないために、頼れるものを4つ持っておくと心が楽になります。
プロや制度、家族の力を借りるほど、自分の余裕が生まれて、結果的に介護を続けられるからです。
特に大事なのが、次の4つです。
信頼できるケアマネさん・話し相手
ケアマネさんは、いつでも困った時に連絡できる相談相手です。
「こういう時、どうすればいいか」を一緒に考えてくれる人がいるだけで、心が軽くなります。
ご近所の人や友達でも構いません。「無理しないでね」「ほどほどにね」と声をかけてくれる人がいると、本当に救われます。
ショートステイを使う
「親を施設に預けるなんて」と心苦しく感じる人もいます。
でも、24時間365日一人で抱えると、体も心も必ず疲れてしまいます。
私の経験から言って、ショートステイは絶対あった方がいい。
ご飯に行ったり、ゆっくり眠ったり、自分の時間を取り戻すために、罪悪感なく使ってください。
介護制度を使い倒す
介護保険は、使えば使うほど自分の負担が減る仕組みです。
要介護認定を受ければ、訪問介護(ヘルパー)・デイサービス・ショートステイ・福祉用具レンタルなど、さまざまなサービスが1〜3割負担で使えるようになります。
地域包括支援センターに相談すれば、利用できるサービスを丁寧に教えてくれます地域包括支援センター(厚生労働省)。
「申請するのが面倒」と思いがちですが、一度動けば後がぐっと楽になります。
制度は遠慮せず、精一杯使えばいいんです。
兄弟・親族と分担する
一人で抱え込むほど、心も体も限界に近づきます。
兄弟や親族がいれば、「役割分担」を一度話し合ってみてください。
直接介護に来てもらえなくても、月に一度の電話、金銭面の負担、買い物の手伝いなど、できる形は色々あります。
「私だけが抱える」状態から抜け出せると、気持ちがずいぶん変わります。
できるところから一つずつ揃えていけば、心と体がだんだん楽になります。
それでも「もう限界」と感じる夜は、もう一つの選択肢があります。
24時間365日は無理|プロに頼っていい

自分一人で全部抱えるのは、もう限界です。プロに頼っていいんです。罪悪感を持たなくて大丈夫です。
訪問介護や施設は「逃げ」ではなく、介護を続けるための選択。家族の体と心を守る方法です。
選択肢は大きく2つあります。
訪問介護で自分の時間を取り戻す
訪問介護を使えば、ヘルパーさんが家に来て、入浴や食事の介助、見守りをしてくれます。
その間、自分は外出したり、ゆっくり眠ったり、自分の時間を取り戻せます。
介護保険のヘルパーさんは時間や業務に制限があり、「半日ゆっくり外出したい」「家族の代わりに見守ってほしい」といった柔軟な頼み方は難しいことがあります。
そんな時に使えるのが、介護保険外で柔軟に頼める訪問介護サービスです。費用は全額自己負担になりますが、毎日頼まなくても「明日の午後だけ」「外出する2時間だけ」のようなスポット利用もできます。保険サービスで足りない部分だけ補う使い方が現実的です。
関東圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)ならクラウドケア、全国対応の大手ではダスキン ライフケアやセントケアといったサービスがあります。
スポット利用や短時間からも頼めるので、「明日の午後だけ少し離れたい」という時にも使いやすいです。
お住まいの地域でどんなサービスが使えるか分からないときは、まず地域包括支援センターに相談すれば、地元の介護保険外サービスも無料で紹介してもらえます(市区町村ごとに設置されています)。
施設という選択肢もある
「ずっと家で介護するのは無理」と感じたら、施設入所という道もあります。
特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)・有料老人ホーム・グループホームなど、親の状態と予算に合わせて選べます。
ショートステイから始めて、慣れてきたら長期入所に切り替える方も多いです。
施設に預けるのは、親を見捨てる行為ではありません。
プロが24時間体制で見守ってくれる方が、親にとっても家族にとっても安心な場合があります。
プロに頼って、罪悪感を持たなくていい。
自分の余裕を取り戻せると、長く介護を続けられます。
私自身の「やめたい」瞬間|34年看護師×現在介護中の本音

実は私自身、現在進行形で母を介護中で、「やめたい」と感じる瞬間があります。
34年間看護師として何家族もの介護を見てきた私でも、自分が当事者になると、想像とは全く違う重さを感じています。
看護師時代の私は、家族介護の方を尊敬していました
病棟で患者さんを担当していた時、付き添うご家族の疲れた表情を何度も見てきました。
当時の私は「お給料をいただいているから、患者さんに罵られても、嫌な思いをしても、ある程度は割り切れる」と思っていました。
でも家族の方は、報酬も見返りもないのに、毎日献身的に介護している。
「よく頑張っているなあ」と、心から尊敬していました。
その立場に、今度は自分がなっています。
看護師として外から見ていた時とは、全然違う重さがあります。
だから、今介護をしているあなたを、本当にすごいと思っています。
「これ私の服よ」と言われた時、立ち尽くしました
朝、母にカーディガンを着せようとした時のことです。
「これ私の服じゃない、なんで着替えるの」と返された瞬間、私は手を止めて、しばらく立ち尽くしました。
看護師として認知症の症状は何百回も見てきたはずなのに、自分の母から言われると、心がついていかないんです。
「私、何しているんだろう」
夜になると、急にそう感じる時があります。
だから、今の「やめたい」が分かります
今「やめたい」と感じている方の気持ちは、看護師時代の私には本当の意味で見えていなかったと思います。
当事者になった今だから、心から分かります。
それは特別じゃなく、頑張っている人なら誰でも味わう感情です。
私が34年看護師として見てきて、それでも自分が当事者になって痛感した感覚。
冷たいわけじゃない。頑張ってきた人ほど、この感情を味わうんです。
あなたは一人じゃない|今夜を乗り越える人へ
最後にひとつだけ、私から伝えさせてください。
人それぞれ育った環境も、親との関係も違います。だから「これが正解」という介護の道は、もともと存在しません。
「これでいい」と自分が決めた選択は、それで正解です。
親は心の奥で、あなたの幸せを願っている
頭では分からなくなっていても、心の奥底では、親はあなたの幸せを願っている。私はそう感じています。
母を見ていると、はっきり言葉にしてくれることはなくても、ふと笑う瞬間に「これでいいんだよ」と言われている気がするんです。
今夜だけは、自分を労る時間を作る
長く介護を続けるためには、自分を整える時間が必要です。
今夜は5分だけ、自分のために何かしてみてください。
「やめたい」と感じる夜があっても、それで大丈夫です。
あなたを尊敬している私が、ここにいます。
「もう辞めたい」気持ちが仕事にも及んでいるなら、こちらも合わせてどうぞ。

コメント