「親の介護で休みを取りたい。でも、職場に何て言えばいいの?」
そう思っている方に、最初に伝えたいことがあります。
介護休暇は、「当日電話するだけでも取れる制度」です。書類の提出は、後日でかまいません。
それなのに、40代以上で「介護休業制度を知らない」「内容がわからない」と答えた人は82.5%(オリックス・リビング調査)。介護休業の取得率も数%台にとどまっていて、介護休暇の利用率はそれよりさらに低い水準が続いています(厚生労働省 雇用均等基本調査)。
つまり、ほとんどの人が制度を知らないまま、一人で抱え込んでいます。
私は34年看護師として働き、今は母を介護している50代です。職場で介護休暇を取った同僚を何人も見てきました。取れた人と取れなかった人の差は、たった一つ。「制度を知っていたかどうか」です。
「介護休暇って、本当に当日電話だけで取れるの?」そう思いますよね。
私も初めて知った時は半信半疑でした。だからこそ、厚生労働省の根拠まで一緒に確認していきますね。
この記事では、介護休暇の取り方(当日OKの根拠つき)/介護休業との違い/看護師時代に同僚たちが「終わりが見えない介護」をどう乗り切っていたか/介護休暇だけでは足りないと感じた時の選択肢を、順番にお伝えします。
読み終わるころには、選択肢が一つ増えているはずです。
介護休暇は当日でも取れます|まず安心してください

「介護休暇を取りたいけど、なんて言えばいいかわからない」
「申請書類はどこでもらうの?」
「上司に許可をもらってからじゃないと、休めないのかな」
介護休暇は、当日朝の電話だけでも取得できます。
これは私の独自解釈ではなく、厚生労働省が公式に示している運用です。
申出の手段は法律上の定めがありませんので、口頭でも申請できます。当日に電話で休暇を申し出てもよいとされており、その場合、必要書類などは、事後に提出することになります。
つまり、朝、上司に「親の介護で介護休暇を使います」と電話で伝える。出勤後に書類を提出する。これで成立します。
しかも、事業主は介護休暇の申請を拒否できず、介護休暇を取ったことを理由に解雇することも法律で禁止されています(育児・介護休業法 第16条の6・第16条の7)。
「制度として、あなたを守るためにある休暇」だと知っておいてください。
介護休暇が「使われない」本当の理由

ここまで読んで、こう感じませんでしたか?
「そんなに簡単に取れるなら、もっとみんな使ってるはずでしょ?」
実はそこにこそ、介護休暇の一番の問題があります。
そもそも8割が制度を知らない
オリックス・リビングが40代以上1,238人に行った調査では、介護休業制度を「知らない」「聞いたことはあるが内容はわからない」と答えた人が82.5%にのぼりました。
厚生労働省 雇用均等基本調査でも、介護休業の取得率は数%台にとどまり、介護休暇の利用率はさらに低い水準が続いています。
「みんなどうしてるんだろう」と感じているあなたは、決して情報感度が低いわけじゃないんです。8割の人が同じ場所に立っています。
育児休暇と介護休暇は、似ているようで違う
もう一つ、介護休暇が踏み出しづらい背景があります。
それは、終わりが見えないこと。
育児休暇は、子どもが大きくなるという目安があります。介護休暇は、亡くなるか施設入所まで続く ─ 終わりが見えません。
だから「とりあえず取って様子を見よう」がしにくい。年5日の休暇で何かが解決するわけではない、と分かっているから、言い出しづらいのです。
私が34年勤めた病棟でも、介護休暇をすぐに取る同僚はごく少数派でした。多くの人は「みんな忙しいのに迷惑をかけられない」「どうにかなるはず」と、まず一人で頑張ろうとしていました。
責任感が強い人ほど、抱え込みやすい構造になっているのです。
介護休暇の取り方|申請の流れ3ステップ

ここからは具体的な申請の流れです。シンプルな3ステップです。
ステップ1:できれば事前に、難しければ当日朝に上司に伝える
理想は、介護が始まったタイミング、もしくは「いつか休むかもしれない」と分かった時点で、一度上司に相談しておくことです。
たとえば、「実は親の介護がはじまりまして。今すぐ休むわけではないのですが、急に休ませていただく可能性があります」と一言だけ伝えておく。これだけで、当日朝の電話がぐっと楽になります。「先日お伝えしていた件で、本日介護休暇を使わせてください」と切り出せるからです。
とはいえ、親が突然倒れて、事前に相談している余裕がないこともあります。そんな時は、当日朝の電話だけでも介護休暇は取れます。
ただ、急な電話だと、とっさに言葉が出てこないものです。言い訳めいた説明になってしまったり、声が震えたり。そんな朝のために、そのまま読み上げて使える短い文を置いておきます。
「お疲れ様です。母(父)の介護のため、本日は介護休暇をいただきます。書類は出勤時に提出します。」
この一文に、大事なポイントが3つ詰まっています。
まず、「介護休暇を使います」とはっきり言うこと。「ちょっと休みます」だと有給休暇と混同されます。
次に、書類は事後でいいと伝えること。上司側が法律を知らない場合があるので、こちらから先回りして伝えてしまうのが楽です。
最後に、家族の症状などの詳しい事情は話さなくていいこと。プライバシーですし、職場の人に細かく説明する義務はありません。
ステップ2:出勤後に申請書を提出する
会社に決まった様式があれば、それを使ってください。
ない場合は、厚生労働省が公開している様式例(社内様式10)をそのまま使えます。
申請書に書く主な項目は以下のとおりです。
- 申出日と氏名
- 対象家族の氏名・続柄
- 介護を必要とする理由(家族の状態を簡潔に)
- 取得する日(または時間)
- 要介護認定を受けているかどうか
家族の関係を確認できる書類(健康保険証の写し・住民票・戸籍謄本など)の提出を求められる場合があります。診断書は基本的に不要ですが、会社規定で求められる場合は別途相談してください。
ステップ3:取得後、有給休暇との違いを確認
介護休暇の給与の扱いは、法律では決まっていません。
有給か無給かは、会社の規定によります。
つまり、就業規則に「介護休暇は無給」とあれば無給、「有給」とあれば有給になります。
申請する前に、就業規則か人事部に一度確認しておくと安心です。
知っておきたい基本の制度

「介護休暇」と「介護休業」は別物です。ここでつまずく人が多いので、整理しておきます。
取得できる人の条件
雇用期間6ヶ月以上の労働者(労使協定で6ヶ月未満を除外している会社の場合)/週の所定労働日数が3日以上/正社員・パート・契約社員すべて対象、です。
対象となる家族の範囲
配偶者(事実婚を含む)/父母・子・配偶者の父母/祖父母・兄弟姉妹・孫が対象です。
「義理の親」も対象に入っているのが意外と知られていません。
取得できる日数(介護休暇)
対象家族1人につき年5日。対象家族が2人以上なら年10日。1日単位だけでなく、時間単位や半日単位でも取得できるようになりました(2021年1月から)。
介護休暇 vs 介護休業
| 項目 | 介護休暇(短期) | 介護休業(長期) |
|---|---|---|
| 日数 | 年5日 / 10日 | 通算93日 |
| 単位 | 1日・時間 | まとまった期間 |
| 給付金 | なし | 介護休業給付金(賃金の約67%) |
| 用途 | 通院付き添い・手続き等 | 在宅介護の体制づくり |
| 申請 | 当日電話OK | 原則2週間前 |
※ 出典:厚生労働省 介護休暇について / 厚生労働省 介護休業について
「介護休業」のほうが給付金もあって手厚いのですが、93日まとめて取ると職場復帰の不安が大きいため、現場では介護休暇を細切れに使う人のほうが多い印象でした。
看護師時代の同僚たちが、こう乗り切っていた

ここからは、私が病棟で見てきた同僚たちの話です。
職場で介護をしていた看護師は、年5日の介護休暇だけで乗り切っていたわけじゃなく、いくつかの制度や協力を組み合わせて、なんとか日々をつないでいました。
組み合わせて使う ─ 多くの同僚がやっていたこと
同僚たちが組み合わせていたのは、介護休暇(年5日 / 10日)、有給休暇(自分の有給を温存せず、介護に使う)、配偶者やきょうだいとの分担、ヘルパー・デイサービス・ショートステイ、この4つでした。
たとえば、母親の通院日に介護休暇を半日ずつ使い、入院中はご主人や妹さんが交代で泊まり込み、退院後の生活が落ち着くまでデイサービスを利用する ─ こんな組み合わせで乗り切っていた同僚がいました。
私の職場でも、配偶者と「平日は私、週末はあなた」と決めて乗り切った同僚もいました。一人で全部背負うのではなく、分担を決めるだけで負担はぐっと変わります。
介護休暇を「集中して」使うタイミング
同僚たちが介護休暇をまとめて使ったのは、ある共通のタイミングがありました。
それは、「施設に入れよう」と決断した時です。
入所先を探す、見学に行く、書類を揃える、家族と話し合う ─ この準備期間が、介護のなかで唯一「終わりが見える時間」です。
「終わりが見える」と分かっているから、思い切って休める。このリズムで乗り切った同僚は、退職せずに看護師を続けていました。
介護休暇だけでは足りないと感じたら

年5日の介護休暇では、現実の介護を全部カバーできないこともあります。
そんなときに頼れる選択肢を、無料・有料あわせて整理しておきます。
① 介護休業(最大93日・給付金あり)
先ほどの比較表でもふれた介護休業は、長期で介護に向き合う必要があるときの制度です。
給付金がある間に在宅介護の体制を整える、という使い方が現実的です。申請は原則2週間前まで(緊急時は職場と相談してください)。
② 地域包括支援センター(無料の公的窓口)
お住まいの市区町村に必ず設置されている、介護の総合相談窓口です。
介護保険の申請サポート、ケアマネジャーの紹介、在宅介護サービスの調整、家族の悩み相談 ─ すべて無料で対応してくれます。「まだ要介護認定も受けていないし…」という段階でも相談できます。
制度のしくみは 厚生労働省 地域包括支援センターについて にまとめられています。最寄りの窓口は「[お住まいの市区町村名] 地域包括支援センター」と検索すれば、すぐ見つかります。
「窓口に行く前に、まず電話だけでもしたい」という時は、地域包括支援センターは窓口だけでなく電話相談も受け付けています。最寄りの電話番号は「[お住まいの市区町村名] 地域包括支援センター 電話」で検索すれば見つかります。
もし認知症のご家族の介護で悩んでいる場合は、公益社団法人「認知症の人と家族の会」の電話相談(0120-294-456・平日10時〜15時・無料)も活用できます。介護経験のある相談員が話を聞いてくれる、介護家族のための窓口です。
③ 訪問介護(自費サービス)でスポット支援
「介護保険の枠だけだと足りない」「ヘルパーさんの時間をもっと柔軟に使いたい」という時に頼れるのが、自費の訪問介護です。費用は全額自己負担になりますが、毎日頼まなくても「明日の午後だけ」「外出する2時間だけ」のようなスポット利用もできます。
こういう選択肢があります。料金やサービス内容を見て、これならと思ったら検討してみてください。代表的な3社の料金・サービスを、各社の公式サイトから整理しました(料金が安い順)。
※ 料金は2026年5月時点の各社公式サイトに記載されたもの。最新は各公式サイトをご確認ください。
料金だけで言えば、関東・関西にお住まいならクラウドケアが一番手頃です(1時間2,750円〜・最低1時間から)。それ以外の地域では、セントケアが事業所のある地域なら次に手頃で、全国どこでも頼めるのがダスキンという順番になります。
口コミ・評判は、それぞれの公式サイトの「お客様の声」だけでなく、第三者の声を見ておくと安心です。「[サービス名] 口コミ」と検索すれば、実際に利用された方の感想がいくつも見つかります。地域差・スタッフとの相性もあるので、複数の口コミに目を通してから決めるのがおすすめです。
※ 料金は地域・時間帯・サービス内容で大きく異なります。具体的な金額は各公式サイトでご確認ください。
お住まいの地域でどんな自費サービスが使えるか分からない時は、まず地域包括支援センターに相談すれば、地元の介護保険外サービスも無料で紹介してもらえます。
「知ること」が、心の余裕の第一歩
介護休暇は、当日電話だけでも取れて、書類は事後でOK。それなのに、40代以上の8割は介護休業制度の中身を知りません。
育児休暇と違い、介護は終わりが見えない。だからこそ、年5日の休暇だけでなんとかしようとせず、有給休暇、介護休業、地域包括支援センター、訪問介護、家族の分担を組み合わせる発想が大事です。
どれか一つでも知っているだけで、一人で抱え込まずに済みます。
介護は、責任感の強い人ほど抱え込みやすい構造になっています。でも、全部一人でやらなくていいんです。
制度を知った今日から、選択肢が一つ増えました。「私だけじゃないんだ」「頼っていいんだ」と思えるところから、心の余裕は戻ってきます。
もし介護と看護師の仕事を両立する限界を感じ始めているなら、辞める辞めないを決める前に、判断軸を持っておくと迷いが減ります。
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